渓流のミノーイングは、チップミノーからはじまった。

 チップミノーの恐ろしさは、その出発点にある。日本で一番古い渓流専用ミノーのはずなのに、なんと生まれた時から「逆引きできるミノー」なのだ。これは皆川哲氏の「サスペンド釣法」という、ダウンストリームでミノーを使う釣り方からきたものだ。この釣法は、渓流の流れの複雑さに大きく逆らうことなく、流れの緩む場所を竿で探し当て、そこの緩い流れの中にルアーを停める(サスペンド)釣り(時にはトウィッチもある)なのだが、せせこましい釣り場しかない日本でしか思いつかない釣り方ではないだろうか。いや、むしろ日本であるがゆえに、ここにたどり着けたのであろう。こうしてチップミノーはアップストリーム全盛の欧米輸入文化に対し、日本独特の「感覚で釣る」という美しく繊細な楽しみ方を、見事に咲かせたのだ。

 チップミノーを取り巻く環境にも個人的にすごく惚れ込んでいる。スカジットデザインズの皆川哲氏の友人・本波氏は渓流を「日本の毛細血管」と表現する。この話はいつ聞いてもゾクゾク来るのだが、水が生まれる尊さ、美しさ、儚さ、時にはその脆さを、すべてを表現しているのだ。個人的には会ったこともないのだがこのような人の愛用するルアーゆえの信用というものがあるのだ。また、制作者の皆川哲氏もいろんな意味で強烈である(爆)。初めてお話した時に、皆川氏は「使い込んだチップミノー、リップを折ってしまったんだが、これを直してくれ、と言われるのが一番嬉しいんだ」と話してくれた。この時くれたヤーガラポップが、あのヤーガラポップである(今はスカジット社内の殿堂に鎮座している)。さらに、たまたま投げたらタンカー船と岸のクッションゴムに挟まれてぺちゃんこになってしまったダイビングビートルというルアーがあるのだが、こいつは原形をとどめない程ぺちゃんこになりながらもしっかり魚を何尾でも釣ってくれている(普通はありえない)。とにかく強力な渦のような釣り運というかパワーが、このメーカーにはあるように思えてならない。

 チップミノーで僕が主に使用するカラーは写真にある緑金/腹オレンジ銀黒/腹オレンジ。特に銀黒に至っては他のルアーではまず使用していないにもかかわらずこのルアーとimaに限りヘビーローテーションとなっている。

 まあ、なんにせよ、チップミノーは僕の中でトラウトを釣って絵になるルアーナンバーワンである、ということだ。